2010年7月21日水曜日

コーチングでは人材が育たない!?

人材育成というのが各企業の経営課題として危機感を募っている昨今、
流行している研修テーマの1つに「コーチング」があります。

その「コーチング」に関しての記事があったので、抜粋します。


―― コーチングの問題を指摘されていますね。

 針生 ええ、コーチングでは解決策にならないのですよ。特に若手については。

コーチングというのは上司が若手とか中堅の社員たちの相談に細かく対応し、「君は何をやりたいのか」などと励ましているわけでしょう。しかし、最近のゆとり世代のような若手は自意識が過剰であり、「君のゴールはここだ」と明言して、引っ張ってやらないと。

日産自動車はコーチングで成功していることで有名ですね。そこでは上司が部下の強みとか弱みをしっかり指摘し、どこに向かうべきかをうまく示して、成功しているようです。最もダメなのは若手の甘い自己認識を放置することです。会社が何を求めているのか、そこをしっかり決めて、理解させるようにしないといけません。

ミドルアップダウンの消滅

 ―― 針生さんの目から見て、日本企業の人材育成での問題点はどこでしょう。

 やはりホワイトカラー職のミドルでしょうか。大企業で最も人材が質的に不足しているのはミドルのホワイトカラーです。これを育てることが簡単ではない。技術者は求められるスキルがしっかり分かります。だから、育てやすい。ホワイトカラーは営業職とか、企画職でしょう。ここは明確な育成方法がないから、難しいのです。

 日本企業の強さはホワイトカラーのミドルにありました。「ミドルアップダウン」という言葉がありましたが、それが消えつつある。以前は米国的なトップダウンがもてはやされたが、それもうまくいかない。ここを何とか解決していかないとだめです。

 ―― クレイアではミドルの調査もされていますね。

 毎年、ビジネスパーソン1000人調査というのをやっています。昨年の調査ではやはり、管理職であるバブル入社組の問題点が明確になっています。

 2005年当時の20歳代の若手向けの調査と比較しても、2009年には「頼りにならない」「面倒を見てくれない」との回答が2~2.5倍に増えていますよ。昨年ぐらいから、バブル入社組が大量に管理職になっていることが影響しているのでしょう。

 リーマンショック後の景気悪化で、自らの業績目標の達成を優先し、部下の面倒を見ていられないということなのでしょうか。

課長になれないバブル世代が組織に沈滞生む

 ―― バブル世代の処遇は難しい課題になっているようです。

 課長になれれば、良いのですが、バブル入社組は大量採用だったので、課長になれない層もたくさんいます。課長補佐のようなポジションにつけられています。そうすると、どうしてもモチベーションが落ちてきますよね。日本の企業の組織において、沈滞感を生んでいます。

 そして、バブル世代の次は「就職氷河期世代」ですよね。この世代も課長になれないバブル入社組を見ています。だから、意欲が落ちている。

 もう1つ特徴的なことがあります。就職氷河期世代は長い間、部下が入って来なかったので、自分で何でもかんでもやる習慣ができています。後輩のゆとり世代に任せるのかどうか。ここで重要なのは自分でやるより、人にやらせることの大切さを上司が理解させられるのかどうか。


プチバブル世代を見極めよ

 ―― ゆとり世代についてはどう思われますか。

 中学校からゆとり教育を受けた世代が今年春に新社会人になりました。ただ、その前の世代も、大きな問題になるかもしれません。ゆとり教育を一部でも受けている層であり、私は「プチバブル世代」と呼んでいます。

 2006年から2008年に大学を卒業し、入社した若手です。この間だけは日本企業が業績改善のために、ものすごく採用を増やした。楽に入社できた人も多い。ですから、この世代が本当に優秀な人材として活躍するのか。企業はそこを見ていく必要があるのではないでしょうか。

 ゆとり世代はやはり、草食系であり、なかなか難しそうです。父親がリストラされるのを見てきた世代であり、安定志向が高まっている。村上ファンドとか、ライブドアとかを見てきたから、出る杭は打たれることをよく分かっている。もう1つ問題なのは自己認識が甘いことでしょうか。自分の能力を回り以上に高く評価してしまう傾向があることです。個性尊重教育の影響がくっきり出ています。

東大から何人採用できたは自慢にならない

 ―― ゆとり世代が入ってくる以上、新卒採用がこれから一段と重要になりそうですね。

 ゆとり世代は甘やかされています。ですから、なぜ、この会社を選んだのかを聞くと、「自分の話しを一番よく聞いてくれたから、入りたくなりました」なんて言っています。他社では「自分の意見に反論されたから、嫌になった」とね。

 昔はリクルーター制度がしっかりしていました。それが機能していたから、学生を見極めることができました。今はそうではないでしょう。採用がうまくできないから、新人を育てることがさらに難しくなっています。特に重要なのは褒めてばかりいてもダメということです。

 入社したばかりの若手をどう厳しく育てていくのか。そこを人事部がしっかり考えないといけません。東京大学から、今年は何人採用できた、なんていうのは自慢にもなりません。

 ―― 厳しく育てたら、辞めてしまいませんか。

 そうかもしれません。厳しくするにも、若手にしっかりと仕事をさせないと。昔の企業は余裕があって、若い連中にも、「おい、お前、少しやってみるか」だったわけですが。それが成果主義の影響で難しくなっている。若手が失敗すれば、それで仕事が回らなくなりますしね。

 しかも、ゆとり世代だから、なおさら、大丈夫か、という感じになります。疑似的に若手に失敗させる研修が必要かもしれません。ゆとり世代はなぜか、自分たちは優秀だと誤解していますしね。


負け組を復活させるサイバーに学べ

 ―― 成果主義でうまく若手を育てるような企業はあるのでしょうか。

 サイバーエージェントは学ぶべき企業でしょう。人材を社内にとどめておくということではうまくやっています。

 ビジネスですから、社員は勝ったり、負けたりするでしょう。成果主義だと勝ち組と負け組に分かれやすいのです。サイバーは負け組にも、次のチャンスを与えて、復活させる仕組みができています。ここがポイントです。成果主義では上から2割が勝ち組になっているケースが多い。真ん中の6割が、上を目指すはずだったのに、ここの意欲が落ちている。まるで「負け組」かのような感じです。

 後はソフトバンクに注目していますね。あそこは中堅は中途採用、若手はプロパーという組織構造になっています。中途採用の中堅が、新卒の若手をうまく育てているのではないでしょうか。


[参照:「コーチングで若者は育たない」 日経ビジネスオンライン]



「受身社員と能動社員」、「バブル世代とゆとり世代」「成果主義」
など議論のテーマになりそうなキーワードが多々ありました。

人材を育成するというのは、企業の永遠のテーマであり、
サービスや商品と一緒で、時代や景気の変動に伴って、
その指導方法や研修内容は変化させていかなければいけないのかも
しれません。

その変化を柔軟に取り入れることができる企業が将来の勝ち組企業になるのでしょう。

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